農薬の人体への影響

農産物・家畜・魚介類等に対する農薬被害

 農水省が集計した農産物・家畜・魚介類等に対する農薬被害の推移は2000年代に入って減少傾向にある。
 農薬登録に際して、蚕やミツバチ等の有用生物に対する影響についての試験成績の提出が求められ、容器にも使用上の注意が記載されている。しかし、よそから飛散した農薬が蚕の餌となる桑の葉を汚染し、蚕が被害を受けることが多い。その他は自動車や建物への飛散被害である。
 最近のミツバチ被害としては、ネオニコチノイド系の殺虫剤ダントツ(活性成分:クロチアニジン)に起因するものが、03には熊本県で、05には岩手県で起こっている。岩手県の場合、水田のカメムシ対策に散布されたダントツがミツバチ死骸からも検出され、全農県本部と農薬の卸会社でつくる県農薬卸協同組合が養蜂組合に500万円の見舞い金を支払うことになった。
 野良犬や・猫の死  野生生物の繁殖に大きな影響を与えた有機塩素系農薬は、POPs条約で規制が強化されることになったが、鳥類への毒性が強い有機リン剤MPPは、農薬や予防用殺虫剤として、未だ使用されており、カラスやタンチョウ等の中毒死の原因となった。ネズミの毒餌を野鳥が食べた事例もあるが、死んだネズミを他の野生生物が食べることによる二次被害も懸念されている。
 毒性の強いパラコート系除草剤がまかれた直後の草地などに犬や猫をつれていくのは危険である。身の回りにあって、入手しやすいせいか、農薬を混合した毒餌が使われ、野鳥や犬・猫の中毒死事件が絶えない。
 
著者名:植村振作様・河村宏様・辻万千子様 出版社名:三省堂様「農薬毒性の危険第3版」を参考・引用しました。